両忘

父の絵、日々の労働、フルニエ先生。

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わが家にずっと昔からあった油絵。
なんと父が描いた作品だったらしい(母から聞いた)。

父が若い頃、油絵を習っていたことは知っていたし、古い絵の具箱やイーゼルもあったけれど、まさか作品が残っていたとは....。玄関や応接間にしばしば飾ってあった絵なのだけれど、同僚の美術の先生からもらったか、あるいは買ったかしたんだろうと思っていた。

父はどこで描いてたんだろう。
わが家だろうか?....ぜんぜん記憶に無いぞ。

作品は、絵の具がこってりと塗り重ねられていて、温かみがある。小さな静物画なのでインパクトはないけど、いい絵だなと思っていた。いまとなっては形見。自分の部屋で飾る場所を探しているところ。

先月から、年末のバイト(肉体労働)をしている。
倉庫で荷役のようなことをやっていて、寒くて体力的にやはり辛い。

マイナス20度の冷凍室で作業をすることもあるんだけど、指先の感覚が消滅して、骨の髄までびりびりとしびれる。へこたれてしまうと、惨めというか情けないというか、気分はすっかり中原中也モード。 ....それでも、何十年も求職に悩んで来た身としては、仕事があるというのはありがたいと思っている。孤独ですけど、年上の人間にもきちんと敬意を払ってくれるし、感謝です。バイト代が入ったら、ナナ(柴犬♀)におやつを買ってあげるのだ。モンクのCDも買うぞ。

一日のうちでいちばん贅沢だと思うのが、通勤の行き帰りにウオークマンで音楽を聴く事。電車を降りて、海にかかった長い橋を渡り、20分ほど山道を登る。朝日を浴びて好きなコルトレーンやらモンクを聴くと、救われます。朝夕の冷たい空気も、心地よくなる。

きのうはピエール・フルニエの無伴奏チェロ組曲(バッハ)を聴いた。

端正で、これぞクラシック、という演奏である。無伴奏チェロ組曲というと、カザルス、トルトゥリエ....派手な名演がたくさんあるが、フルニエの演奏は、傑作を渾身の力を込めて弾く、というものではない。バッハが書き残した♪を誠実に、自分の愛器を信じて淡々と音にしていく....ストイックで静かなものである。これは心に滲みる。

村上春樹は『海辺のカフカ』のなかでフルニエの演奏(ベートーヴェンの大公トリオ)を紹介しているが、大演奏家への敬意を込めたのか「フルニエ先生」と登場人物に言わせている。フルニエのバッハは、まさに「先生」が弾くバッハ、そんな感じだ。

こういう演奏は、父の好みでもあるような気がする。
親子だな、と思いつつ山道を登る。
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by ksksk312 | 2008-12-10 22:51 | 或る日