両忘

東京32時間滞在記(その2)

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東京滞在記2日目です。

まず、ホテルをチェックアウトしてから渋谷へ。
森美術館に行ってみようかとも思ったけど、待ち合わせに遅刻しそうな気がして断念。動き回るに不安ない場所をぶらぶらすることにする。パルコもロフトもシネマライズも昔のままだったが、ジャンジャンが無くなっていた....。移転したの?

午前中であまり客のいないタワーや洋書ロゴスをのぞいて、東急文化村のギャラリーへ行き、「REAL OSAKA」という展覧会を見る。サイトにはもっともらしい文言が並んでいるが、ようするに関西のギャラリーが、若手作家を(1ギャラリーにつき1人ずつ)セレクトして東京に紹介する企画展である。セレクトされた12名の作家のなかには宮崎の小松英孝さんもいて、彼の作品を初めて見ることが出来た。

感想は....どの作家も力作で、時間を忘れて作品を堪能したと思う。ただ、どれもいかにも日本の現代美術という感じで、ステレオタイプとまではいわないが、ほんとにこれでいいの、という気がしないでもない。(お金があれば)欲しいと思う作品だってあったんだけど、作品の(文化的な)文脈はおおむね想像の範囲内で、新しいモノを見たというおどろきは無かった。それと展覧会のプレスリリース、「大阪アンダーグランドアートの底力」って....これは何やねん。これはファインアートやろ、メインストリームやろ。アングラやないちゅうねん。「具体」に触れるくらいなら堀尾貞治を持って来んかい。と、1人乱心して会場を後にする。....。

高円寺へ移動。
中野で東西線の車両を見つけて涙が出そうになるが、こらえる。

南口でEI坊と合流。

無人島プロダクションへ行き、Chim↑Pomの「Fujiyama Geisha JAPAnEse!!」という展覧会を見る。 Chim↑Pomのことは、昨年の広島での騒動で初めて知ったのだけど、マンガのようなことをする連中だなあという感想を持った。やっていることがマンガのようだといいたいのではない。普通ならマンガに逃げてしまうようなアイデアを、地雷を踏むリスクも厭わず現実のなかに投げ込んでいるのではないか、ということである。広島での行為はひどいと思う。だが、自分自身が「マンガ」になって、世の中に「作品を描いてみせる」ようなことをしているのは、彼らの他にはいないのかも知れない。 Chim↑Pom の作品から、ぼくはテレビのお笑いを連想してしまう。ちょっと古いけど「進ぬ!電波少年」....みたいな。放送作家的才能が、現代美術の世界で暴れている、という印象だ。

で、「Fujiyama Geisha JAPAnEse!!」なんだけど、外国人がイメージするステレオタイプな「日本」、スシ、スモー、ニンジャ、フジヤマ....etc、を Chim↑Pom流に解釈して(笑い飛ばして?)作品化する試みのようである。身体を張ったイベントを仕掛け、その記録や副産物を作品に落とし込む方法は今回も同じで、映像やら平面、立体、パフォーマンス、いろいろあった。

まずギャラリーに展示してある作品については、残念ながらわからん、と思った。

トラックのハッチに描かれたデコトラ風女性メンバーの肖像、回転寿しで(一週間食われずに回され)からからに干からびたエビ(イクラだったかな?)、ナメクジが這うように板に貼付けられた寿司の模造細工。....ちょっとベタじゃないかい? あと、Chim↑Pom序列最下位(らしい)のメンバーが、女子大生のピラミッドに乗りばか殿を演じている写真。ううむ....笑えない。これはぜったいにすべってる。すべっているぞ。頭をフル回転させて作品と向き合うも、バカボンのパパではないが「これでいいのだ」という声が聞こえてきた(ような気がした)だけである。

だけど、パフォーマンスは面白かった。
(展覧会は終了しているのでご紹介)

ギャラリーに30センチ四方くらいの小さな小窓があり、スタッフの方から「ニンジャが瞬間移動やってます〜」との説明を受ける。小窓の下にサンプルらしき写真があって、見ると忍者コスチュームの男が、高円寺駅のガード下にはり付いている。どういう作品なのか、さっぱりわからないまま窓の外を眺めていると、正面のビル、給水タンクのてっぺんで、ニンジャ男が腰に手をあてて立っているのを発見....わはは。最初はフィギュアかと思ったが、こっちに向かって手を振ってくる。....人なのね。すごいです、身体はってます....笑。スタッフの合図でタイミングよく出てくるんだろうけど、真夏の炎天下、ずっとこれをやっていたのでしょうか。座布団3枚、と思う。

Chim↑Pomはほんとにリスキーな作品をつくっている。しかし決してシリアスにはならず、最終的に確信犯的ないかがわしさで逃げを打つところがあり、フットワークが軽い。リスキーさとフットワークの軽さ、著名なギャラリーが積極的に絡むはそのあたりに理由があるのだろうか。アートだから何をやっても許される(作品になる)というわけではないけれど、彼らには Chim↑Pom としてブレずに生き残ってほしいと思う。

ちなみに無人島プロダクション、雑居ビルの最上階で入るのに気合いがいりましたけど、スタッフの接客がとてもていねいでした。挨拶もちゃんとしてくれたし(何もしないギャラリーが多い。おかしいと思う)気持ちのいい空間でした。

都営新宿線で曙橋へ。
AISHO MIURA ARTSというギャラリーへ行く。

ここはかっこいい空間のギャラリーだった。2階建ての民家をそのままギャラリーにしてるんだけど、壁を真っ白にペイントしただけであまり手を加えていない。2階のレンタルスペースは住居空間の間取りが残っていて、オルタナティヴ感が抜群です。天井が低いので大きな作品には向いてないのかも知れないけど、コラージュやドローイングにはすばらしい空間だと思う。

一階がAISHO MIURA ARTSのスペースで、菊池良博さんという作家のコラージュ作品の展示。ネットで見てぜったいに行こう!と思った展覧会だったんだけど、期待通りでした。茶室のような狭い空間に、おそらく数百点のコラージュ作品が壁面を埋め尽くされている。一点一点に訴求力があり、ていねいに鑑賞することを見るものに要求してくる。真ん中にも、和式便器を使った立体作品があった。作品は排泄物であるという暗喩にもみえるが、トイレにしては広すぎ、ギャラリーにしては狭い微妙な空間を挑発する力になっていたと思う。訪問したときは作家不在、スタッフ不在の無人だったが、九州から見に来た甲斐はあった。

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ギャラリーを出て、近くの珈琲屋へ入る。
EI坊と、会いに来てくれた東京の友人WAMO君と3人でオヤジトーク。

東京は意外と変わっていなかった。新しいビルが建っていたり、SUICA専用の改札があったり、目についたのはその程度で、人の流れも、近景も中景も遠景も、東京のままだったと思う。3人とも、顔をあわせるのは10年ぶりだったわけだけど、同窓会的なノリではなく、ごく普通の世間話や音楽の話をだらだらつづけられたのが気持ちよかった。次に顔を揃えられるのはいつになるかわからないのに、特別な感じがまったくしない。あっというまにタイムリミットがきた。

曙橋でEI坊、WAMO君と別れ、ホテルへ戻る。
荷物をピックアップして羽田へ。飛行機に乗った。

楽しい東京の旅でした。滞在時間が僅か32時間であったのが信じられないです。いちばんの収穫は、自分の視野が広がったこと。言葉にすると逃げてしまいそうなのであえて封印するが、東京に来たことで、自分の前に立ちふさがっていた気持ちの「壁」がひとつ、間違いなく消滅したと思う。自分の作家マインドに自信を持って、日々の制作を大切にしていきたい。このまま行こう。
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by ksksk312 | 2009-08-17 17:47 | 読書美術音楽、etc