両忘

バリシニコフの足

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先週の朝日新聞に掲載されていたルイ・ヴィトンの広告から。

足の主はミハイル・バリシニコフです。腰に両手をあててリラックスした姿で立っていて、右側には写真家のアニー・リーボリッツが坐っていました。とにかくこの足、すごいと思います。つま先がつぶれてしまって、肉厚がふつうの人間の倍くらいあるんじゃないだろうか。これはもう、獣の足です。

以前、自分のブログに書いた事があるけれど、バレエには(フラメンコやアイリッシュダンスのような)しっかりと床を踏みしめるという動作がほとんどありません。身体はつねに宙を目指して跳ねつづけなければいけないのだけど、跳ねる事を支えるのは「床」を蹴るという動作です。床から離反することを目指しつつも、床が無ければ成立しないバレエ。このエディプス的といっていい屈折した関係が、バリシニコフの「足」を作り出した、ということになるのでしょうか。

有名無名関係なく、プロフェッショナルな芸術家というものがいるとすれば、こういう創作の「痕跡」を肉体か、もしくはハートにかならず持っているのではないか。もちろん....これは芸術家に限らないです。プロフェッショナルとして多くの経験と知恵を積めば、身体かハートのどこかに獣のような痕跡が出来てしまう。痛いし、苦しいし、飽きる事もあるだろうけど、それをやらないと生きていけないという信念が人を前に進めるんだと思う。

とにかく、ぼくにはまだまだ....こんな獣の足はありません。
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by ksksk312 | 2010-03-14 22:58 | 断片集