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両忘

ホーリーマウンテンと死の夢。

まず、A4のインクジェット紙に、鉛筆で横線をランダムで引く。
線の位置を見ながら、木炭と鉛筆だけで画面を構成してみる。

そういう作業を10枚、20枚とつづけるうちに、横線がだんだん地平線に見えてきた。 気がつくと、山のスケッチを描きはじめている。とんがり山、お椀をひっくり返したような柔らかい山。気ままに線をひき、木炭をこすりつけ、 "holy mountain"だの"mother mountain"だのと言葉を入れはじめると、どういうわけか涙腺がゆるくなってしまった。

その日の夜に見た夢。

記録。3月9日。
ある百貨店を、未知の友人(男)と歩いている。家に帰るところ。 交通事故で人が死んだらしい。店内でそんなうわさ話が流れている。 正面玄関まで来ると、ボンネットがつぶれたタクシーと、ハッチバックがつぶれてるスポーツカーが並んで置かれていた。 スポーツカーの車内には犠牲者が寝かされている。若い長髪の男。傷だらけだが、安らかな死に顔。 身体の上にはネクタイとシャツ、スーツがていねいに折りたたまれて置かれている。まるで棺桶に寝かされているようだ。

棺桶のなかの死体は、自分の分身なんだろうなあと思う。
心理的に、なにかが死んだのだ。

人間の身体は、細胞の新陳代謝で日々新しくなっているそうで、3ヶ月もあれば完全に新しい細胞にかわってしまうらしい。 人間の感情や無意識のエネルギーにもおなじようなところがあるにちがいない、と思う。

目が覚めて一時間ほどぼんやり。

なぜか、吉田美奈子を聴きたくなる。ひさびさの『Extreme Beauty』....この人はすごいや。 驚異的な声をサウンドに浸っていると、いま自分に見えている風景だけで、じゅうぶん美しいのではないか、と思えるようになってきた。 なんだか、とってもリフレッシュした気分。

自分が見ている風景や望みを、生まれ変わった感情でいちから愛せるような。
風景には霧がかかったり雨が降ったり...いつも見えるわけではなくて、無理をして地平線の先まで見通したいと苦しんだり。 でも、ここから見えないものは見えないのだ。この風景を、いまは愛そう。

ホーリーマウンテンと死の夢。
つながっていたのか、無関係だったのかわからないけれど、面白い組み合わせだなと思っている。100枚、200枚、しばらく描いてみよう。
by ksksk312 | 2007-03-11 22:23 | 断片集