両忘

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立石大河亞賛江 #1
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(無断での転載はご遠慮ください)
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by ksksk312 | 2010-09-22 23:33 | on paper '10

経緯と見解(その3)

(前回からの続き)

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以上のように、いろいろと悔しい思いをしましたが、作品はすでに送り返されており、館長名のお詫びの文書もいただいています。作家として(後述するような)不満は残りますが、少なくともかたちの上では一件落着しています。これ以上の対応をしていただくのは困難ですし、求める気持ちも残っていません。しかしながら、(作家を無視して)美術館の一存でこういうことが起こってしまうのはとても重大なことであり、二度とあって欲しくありません。これからどうあるべきか、自分の思うところを書き記しておきます。

まず、自分自身の反省すべき点としては、美術館側との連絡をできるだけ密にとり、展覧会が始まる前から担当者さんと信頼関係を築いておくことが大切だったということです。今回の作品では、事前にこちらからは作品のサイズと点数だけお伝えしましたが、内容については志久の自由にさせていただきました(通常はそれで問題ないと思います)。ですが、完成が見えてくるにつれ、公立美術館で展示するには挑発的かな、という意識が頭の隅になかったわけではなく、連絡を取り合う過程でなんらかのお話をしてもよかった、自分に気配りが欠けていたのが悔やまれます。もっとも、その時は制作に集中していて、いい作品を完成させることしか考えられなかった、というのが現実なのですが....。それに、作品内容について美術館側からなんらかの「指示」があったとしても、要求を受け入れることはなかったと思います。完成した作品について、どうするかを話し合う、そういうことになったと思います。

問題が起こってしまったときの、美術館側の対応について、作家サイドからの見解を書きます。

今回のように展示をしない決断をする、それはやはり重大なことだと思います。その場合、当たり前の話なんですが、まず作家に連絡して、美術館の見解を伝えるべきです。その上で、話し合って対応策を決める、一方的に美術館で決めてしまうのはぜったいにやってほしくないです。予定通りの展示が出来ないのであれば、作家と共同で次善の案を探す、それもだめで、どうしても展示できないなら、美術館としてどうすべきか、真剣にかんがえて、キメの細かな対応をするべきだと思います。

今回、田川市美術館からは館長名で詫び状を書面でいただきました。美術館として、事前の連絡が足りなかった点について遺憾の意を表し、今回の判断は作家の芸術性まで否定したものではないことを申し添える、そういう内容になっています。志久として、とくに受け入れ難い文言というものはありません。形式的ですが、作家への敬意はいちおう感じられ、内容について異を唱えるところはほとんどありません。ただ問題は、お詫びの書面に記されているような作家への敬意が、館内で実行されていたかどうかです。館内での経緯説明等は、やはり充分とはいい難いです。展示室での具体的な経緯説明の文言はなく、対応については、前述の通り観覧者から問い合わせがあった場合にスタッフが口頭で説明する、ということになっているようです。ウエブサイトへの経緯掲載も断られました。自分がもし美術館のスタッフだったら最低限これだけはするだろう、ということがなされていない。そもそも、8月19日の展示拒否通告以後、その後の経緯説明について、美術館からきちんとしたかたちで連絡をいただいたことは一度もなかった。美術館の具体的な対応については、こちらから問い合わせたり、直接出向いて確認を取るなどしないとわからない、それが現実でした。美術館に展示判断の権限があるのなら、同時に責任もあるはずです。作家に対してきちんと責任を果たせたかどうか、美術館におかれましても真摯に検証していただければ幸いです。

田川市美術館には、先週の土曜日、9月11日に実際に足を運びました。

タイガー立石の作品群、すばらしかったです。そして企画展の作品もとてもよかった。担当者さんから今回の一件について、詳しく経緯を聞くことが出来たので、心情的な部分では自分なりに落としどころを見つけています。美術館の対応には不満が残りますが、こちらにもまったく反省すべき点がないわけではありません。挑発的な作品を出品して、お騒がせしたことは遺憾に思っています。また、問題が起こってからの自分自身の対応も、(いまから思えば)不十分だったところもあり、経験不足、未熟さを痛感するところもありました。自分の作品のためにもっと出来たことがあったのではないか、忸怩たる思いは残っています。

しかし、こういう異なる価値観と正面からぶつかる経験は、作家としてはとても貴重なものでした。自分があたりさわりのない作品しか制作しない、そういう作家ではないことがよくわかったし、いろいろとお騒がせしましたが、結果として、自分に自信を持てたように思います。なにより、今回の企画がなかったら、この作品は生まれなかった。それに、こういう真剣な局面に向き合うと、自分自身の魂(たま)が晒されることになります。同時に周囲のひとたちの魂もかいま見ることが出来ました。ふりかえってみると、悪いことばかりではなかったと思います。いま、自分自身に言い聞かせているのは、こういうことがあったからといって、「迎合」してはいけないということです。これまで通り堂々とフルスロットルで制作して、自分の芸術を切り拓いていく。肝に銘じているところです。

最後にもうひとつだけ。

美術館の企画展には出品できませんでしたが、美術館の判断に異を唱え、田川市内での展示を自主的に申し出てくださった方がいらっしゃいます。第3者の方ですが、その方のご尽力で、市内のライブハウスやアートスペースで、一時的に展示させていただくことになりました。展示中、志久はその場に居合わせることは出来ませんでしたが、たくさんの方々に作品を見ていただくことができたようです。美術館の判断については賛否両論いろいろあったそうですが、作品については高い評価をいただきました。自主展示にご尽力いただいたTさん、展示を快諾してくださったスペースのオーナーの方、ほんとにありがとございました。田川市美術館のSさん、今回はお騒がせしました。お仕事、制作、これからもがんばってほしいと思います。

(無断にての引用、転載はご遠慮ください)

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以上で、田川市美術館との間で起こった件の、作家サイドから知りうる経緯と見解を終わります。念のため申し添えますが、これは美術館をとくべつ批判するような目的で書かれたものではありません。今後、福岡やその周辺でこういうことが二度と起こらないように、との思いから書かれた「記録」という位置づけです。どれだけのひとの目に留まるかわからないけれど、もしお役に立てることがあれば幸いです。
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by ksksk312 | 2010-09-20 19:26 | お知らせ、個展など

立石大河亞賛江 #3

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(無断での転載はご遠慮ください)
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by ksksk312 | 2010-09-13 22:19 | on paper '10

経緯と見解(その2)

(前回からの続き)

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「拝啓立石タイガー様」展は、主に現代美術の作家が集められている企画展です。それにもかかわらず「著しく表現が特殊である」ことを理由に、展示から締め出されたことには、ショックを受けました。他の作家と比べて、とはどういう意味か、他人と異なる表現手段を世の中ではオリジナリティと呼ぶし、それこそ作家の生命線ではないのか、なぜ、自分の作品だけだめなのか。しかしながら、美術館の方は、作品は公立美術館の展示にはふさわしくない、館長判断が出たので作品は返却します、そう繰り返すのみでした。

すごく冷めた見方をするならば、ぼくにふりかかった今回のアクシデントは、「表現の速度違反」を犯してしまったのだと思います。田川市美術館になにがしかの「制限速度」があるとは知らずに、フルスロットルで制作をしてしまった。「いまどき、みんなこれくらいのスピードは出してるよ」と言っても、違反は違反ということなのでしょう。不当なレッドカードだとは思うけれど、展示の権限が美術館側にある以上は退場するしかない、ということなんだと思います。

作品の内容についても、作家の側からの見解を書きます。

美術館が問題にしたのは、具体的な説明がないのでわからないけれど、作品のコラージュ素材であるポルノ雑誌からの切り抜きだろうと推察します。ただ、それらは、昭和40年代前後のレトロなもので、いまの時代からみるとグラフィティとしてとても面白いと感じ、自分なりのセンスでチョイスしたものです。時代遅れのエロと、カビ臭い印刷物のマチエール....猥雑さとけばけばしさがまさに「昭和」で面白いと思ったわけで、正直、エロチシズムが表現のテーマの主体というわけはありません。実物を見ていただければ、そのあたりは理解していただけると思います。

さらににいうと、ぼくの作品はそいう雑誌からの切り抜きだけで埋められているわけではないです。作品の「明」の部分はエロ系のコラージュ、タイガー関係のコラージュで構成、背景にあたる部分は「老子」や仏典からの引用、タイガーの愛した人物たちの肖像など、ハイカルチャー的な素材で構成してあります。この作品では、そういう聖と俗の反転、そして融合を試み、最終的にはエネルギッシュな昭和のイコンを描きたかった。挑発的な素材が作品の中にあることは認めるし、展示にリスクがある表現であることは認めます。しかし、法律に触れるようなわいせつな表現、他の作品からの悪質な剽窃、他者を傷つけるような表現、そういうものは無いはずです。

個人的な意見を言わせていただければ、たとえ公立美術館であっても、「表現の速度制限」というものはあってはいけないんじゃないかと思います。もちろん、繰り返しますが、明らかに公序良俗への配慮に欠ける表現、他の作品から悪質な剽窃、人権の侵害、そういうものはまずい。芸術の名の下に、作家の自由が無制限に保障されていいわけではない。芸術に免罪符はありません。しかし、その範囲を越えていないと判断できるのであれば、展示は前向きに検討してほしかったと思います。今回の作品は公募展に応募したものではありません。依頼を受けて制作した作品なので、多少のリスクはあっても展示をしていただいて、来場者の主観にゆだねていただきたかったと思っています。そこで、箸にも棒にもかからない愚作であると判断されても、それはもちろんオーケーでした。

さらにもうひとつ。

今回の件で美術館の方とやり取りする中で、「子どもに見せられない表現がある」という言葉を投げかけられました。これはどういうことを言われているのか、ずっと考えてきました。それは、とどのつまり、子どもが鑑賞するにはリスクのある作品である、(同時に)子どもの親たちに説明しがたい表現がある、ということだろうと思います。公立美術館には、美術作品の展示やワークショップを通じて教育普及活動をするという目的もあります。その活動に支障をきたす作品は、公立美術館の展示にはふさわしくない作品という考え方があるのかも知れません。

たしかに、今回の作品には女性のヌードの画像はもちろん、ポルノ雑誌の上品とはいいがたい惹句(たとえば「女子大生のセックスハイク報告」「異常愛欲寝室実話大特集」など)もコラージュに使っています。言葉は、大人たちにとっては画像以上に強烈かも知れません。志久としては、そういう言葉であっても、当時の印刷物とデザインを通してみるとグラフィティとして面白いし、そこに昭和のユーモアがある、と思うのですが、子どもに訊かれて説明に困る、と言われればその通りかも知れません。

しかし、(アメリア・アレナスの著作のタイトルではないけれど)「なぜ、これがアートなの?」という問いかけに答えること、来場者の疑問に正面から向き合うことも、美術館の役割であり使命といえないでしょうか。作品に問題があるのであれば、一方的に突き返すのではなく、まずは作家に「なぜ、これがアートなの?」と訊いてほしかったと思います。挑発的な素材は使いましたが、あくまで美術作品の文脈に落とし込んだつもりです。作家の立場から、責任をもってお話する準備はありました。話し合いをしてもだめで、展示が出来ないのであれば、ぼくも納得できました。

(続く)

(無断での転載、引用はご遠慮ください)
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by ksksk312 | 2010-09-10 22:31 | お知らせ、個展など

立石大河亞賛江 #4

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(無断での転載はご遠慮ください)
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by ksksk312 | 2010-09-05 22:47 | on paper '10

立石大河亞賛江 2#

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(無断での転載はご遠慮ください)
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by ksksk312 | 2010-09-05 02:21 | on paper '10

経緯と現時点での見解(その1)

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お騒がせしております。

前述の記事の通り、田川市美術館で開催中の「拝啓タイガー立石様」展への作品の展示を拒否されてしまいました。これから数回に分けて、作家サイドから知りうる経緯と見解をまとめておきたいと思います。自分自身と、おおげさなもの言いではありますが、福岡でアートに携わる人のためにも、きちんと発言しておいたほうがよいと思い、記録を残しておこうと思いました。ご意見は歓迎しますので、コメント欄やメールをご利用ください。

まず現状(9月5日現在)ですが、グループ展に一応参加していることになっていますが、作品の展示はありません。展示室にはぼくのプロフィールと立石タイガーへのオマージュとして書いたテキストだけが展示してあり、作品が配置されるスペースはそのまま空いているそうです。スペースには不展示の説明として「今回、志久浩介氏から出品いただいた作品は、公立美術館としては展示し難い作品と判断しましたので、展示をみあわせました。田川市美術館」との一文が掲示してあり、観覧者から問い合わせがあった場合には、スタッフが口頭で説明するという対応になっています。(口頭での説明内容について、美術館側から志久への連絡、同意確認はなし)

作品はすでにこちらに送り返されています。館長名のお詫び状も同封されてましたので、近日中に、お返事させていただこうと思っています。

展示拒否を撤回させることは、とても悔しいけれど、ぼく個人の力では不可能でした。無茶苦茶な話だと思いますが、最終的に展示の権限は美術館にあるといわれれば反論できません。開催期間も限られているし、正直あきらめています(了解しているわけではありません)。あとは経緯をどう美術館が来場者に対してアナウンスし、作家に説明していただけるかです。

展示室の説明文は、具体的な経緯説明がなく、作家や来場者への配慮に欠けていると思います。しかしながら、展示拒否の責任の所在はきちんと明記してあり、その点はオーケーです。いまさらこの文言に異を唱えるつもりはありません。ただ、志久としては同じ文言をウエブサイトでもきちんとアナウンスしてもらいたいと思い、おねがいしましたが拒否されました。「(美術館として)そこまでする必要はない、との判断をした」のだそうです。

次に作品について説明します。

今回制作したのは50センチ×40センチのサイズの平面作品、5点でした。タイガー立石へのオマージュであれば自由に制作していいとのことでしたので、資料を読み込んだり、使えそうな素材を集めたりはしましたが、いつものように完成予想は立てず、即興的に制作していきました。作品画像は(興味本位で見られる可能性もあり、逡巡しましたが)随時公開していくことにしました。ご覧いただければわかるように、たしかに挑発的なコラージュ素材をたくさん使用しています。具体的にいうと昭和40年代以前のポルノ雑誌の表紙、グラビア、映画のチラシなど。もちろんそういう素材だけで作品が構成されているわけではありません。画像ではわからないと思うけど、資料を読み込んで発見したタイガー立石の象徴させる素材を集め、時には自分で作り、融合させ、タイガー立石が生き、ぼくも生きた昭和のエネルギーを作品に込めたいと思いました。けれどそれは、田川市美術館にはNGだったようです。

美術館からの連絡は8月17日の午前11時頃、突然届きました。

美術館の担当者さんから電話で、作品に美術館での展示にふさわしくない表現がふくまれており、美術館内での展示は出来ない、との連絡でした。「公立美術館での展示にふさわしくない表現がふくまれている」「子どもに見せられない」。よって、美術館に遠くない場所に、別会場を探してそこに展示する。....提案ではなく、決定事項でした。作品を16日に送ったので、美術館に到着してからたぶん1時間くらい、たったそれだけの時間ですべてが決まってしまったわけで、よほどひどい作品を送ってしまったんだろう、と自信を失い、自己嫌悪に陥りました。しかし、箸にも棒にもかからない愚作なら「別会場」すらないだろう、しかも担当者さんはぼくの作品は気に入ってくれているようで、即座に別会場探しに動いてくださっている....。自分が送った作品がほんとうにひどいものだったかどうか、あらためて考えてみることにしました。

一晩悩みましたが、やはり自分の作品にはやましいところはないのではないか、挑発的ではあるけれど、たとえ公立美術館においても公序良俗を乱すような表現は見当たらない。自信をもっていいし、責任もじゅうぶん持てる、との思いに至りました。とにかく作品について説明する機会もあたえず、すべてを美術館サイドで決めてしまうのは、強引過ぎるのではないかと思いました。

別会場探しは、担当者さんが個人的なつてを頼りに精力的に動いていただいたようです。いろいろと候補はあったようですが、翌日18日、最終的に提示されたのは美術館にほど近い洋服屋さんでした。ひなびた感じの古い洋服店ではあったけれど、存外おもしろい展示が出来るかも知れない、そうは思いましたが簡単にオーケーは出せませんでした。作品が問題を起こしたとはいえ、1人だけ美術館から締め出されて館外展示を1ヶ月。それを無条件に受け入れる自分を「作家」と呼べるだろうか、否でした。そこで担当者さんには、条件を出しました。館内と別会場、双方に今回の経緯をパネルにして掲示すること、文言はこちらにもチェックをさせていただき、双方が納得したものであること、それが認められなければ今回の展覧会からは撤退する。20日の初日には間に合わないかもしれないけど、それでもオーケーですとお伝えしました。

翌日19日、館内の会議で、この件が議題に上ったそうです。

ぼくの出した条件が討議されたのかどうかはわかりません。担当者さんは、別会場ではなく、ぼくの作品も絶対館内で展示したいという気持ちを抱かれたようで、その線で交渉なさったようです。ぼくとしても、館内展示ができるのであれば、「注意喚起」付きでもいいからそれが良いと思う。しかしながら、結局、館長さんの判断で館内展示はだめ、別会場もだめになってしまいました。その日の夕方、担当者さんの上司から電話があり、「公立美術館の展示にふさわしくない表現がある」との理由で、あらためて作品の展示拒否を告げられました。具体的な理由を問いただしたのですが「他の作家と比較して著しく表現が特殊である」とのこと。「表現が特殊だからだめなのですか?」とあらためて訊くと「そうです」とのお返事でした。

言葉を失いました。


続く

(無断での引用、転載はご遠慮ください)
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by ksksk312 | 2010-09-05 02:18 | お知らせ、個展など