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両忘

形見

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土曜日。 大学時代からつきあいのあるTくんから「会おう」と連絡あり。昨年亡くなった母上が遺したやきものが山のようにあり、(片付けられないので)「欲しいのない?好きなだけ持っていっていいよ」とのこと。

マグカップをひとつかふたついただけたら、というつもりで戸棚を見せてもらったんだけど、かっちょいい備前を発見。すこし舞い上がってしまい、気がついたら備前の一輪挿しやら唐津の花瓶やら、あと母上が焼き上げた作品、10点ほどいただいてしまう。家に持って帰ったら、母が「身内でもないのにこんなにもらうとは!」とプチ激怒。膨大な数からの10点だったとはいえ、それもそうですね....。少し反省です。

でも嗚呼、備前。備前はいいです。

備前は釉薬をかけないで高温で焼き締めて拵えるので、土の質感がむき出しになり、表面に窯変という現象(炎の跡や窯内で付着したさまざまな不純物)が残るのだけど、これがたまらんのです。流行の言葉でいうと偶有性の美、といったらいいのかな。ほんとに美しいです。

Tくん、亡くなった母上、ほんとにありがとうございます。昨夜はいただいた備前を鑑賞しつつ、音楽を聴いたらとろけました。チャーリー・ミンガスの『直立猿人』。偶有性の美にはフリージャズが似合います。ただ不思議なのは、好きなものに囲まれているのに、自分で買ったり、贈り物をいただいたときのような満足感やうれしさはあまり感じなかったこと。うまくいえないんだけど、やきものたちがTくんの実家から「居場所」を変えてここにいるだけ、という感じ。自分のものになったという感覚はまったくなくて、これが形見というものなのかな。大切にして、いつかは誰かに受け継ぎたいという、そんな気持ちです。

もうひとつ、土曜日。

忌野清志郎の死。
覚悟はしていたけれど、嗚呼、来るべきときがきたんだなあ、と思う。

「トランジスタラジオ」を聴いた時、英語がわかればロックってこんな風に聴こえるんだと思いました。全盛期のRCサクセションを、初めてのロックのライブとして観ることが出来たのは幸せな体験です。あれから25年、『シングルマン』と『ラプソディー』を残してアルバムを(レコファンで)処分したぼくはフトドキものですが、それでも清志郎を愛していたんだと思います。

日曜日はバイト先で『ラプソディー』をずっとかけてました。「雨上がりの夜空に」で鼻歌してるお客さんもいたので、悲しいけどうれしかった。
by ksksk312 | 2009-05-05 00:06 | 或る日